機体登録の次にやること——飛行許可・承認申請をDIPS 2.0で通す完全ガイド【2026年版】
ドローンを業務で活用する際、機体登録(JU番号の取得)の次に必ず直面するのが「飛行許可・承認申請」です。この申請なしに飛ばしてよい空域・方法は限られており、業務用途では多くの場合で申請が必要になります。
申請窓口が「DIPS 2.0(ドローン情報基盤システム 2.0)」です。国土交通省が運営するオンラインシステムで、飛行許可・承認の申請から飛行計画の通報まで、ドローン運用に関わる手続きのほとんどをここで完結できます。
この記事では行政書士の視点から、DIPS 2.0の仕組み・申請が必要なケース・実際の申請手順・よくある失敗まで、実務で即座に使える形で解説します。
1. DIPS 2.0とは何か
DIPS 2.0は「Drone Information Platform System」の略で、国土交通省が整備したドローン関連手続きのオンライン総合プラットフォームです。2022年12月のシステム刷新(旧DIPSからの移行)により、機体登録(DRS機能)・飛行許可承認申請・飛行計画通報・リモートID管理などが一元化されました。
DIPS 2.0でできること
- 機体登録(DRS):JU番号の申請・管理
- 飛行許可・承認申請:特定飛行(空域・方法の規制対象)の許可申請
- 飛行計画の通報:飛行前24時間以内の計画登録(一部飛行で義務)
- 操縦者ライセンス確認:国家資格(一等・二等無人航空機操縦士)の管理
法的根拠は航空法第132条の85(無人航空機の登録等に関するシステムの整備)で、国が法定化したシステムである点が重要です。単なる行政サービスではなく、法律上使用が求められる手続き窓口です。
DIPS 2.0と関連システムの関係
DIPS 2.0のアカウント1つで、機体登録から飛行許可申請まで連動して管理できます。JU番号は飛行許可申請の際に機体情報と自動的に紐づくため、二重入力は不要です。機体登録時に作成したアカウントをそのまま飛行許可申請でも利用できます。
2. 飛行許可・承認が必要な「空域」と「方法」
航空法では、一定の空域での飛行・一定の飛行方法を「特定飛行」として規制しています(第132条)。特定飛行を行う場合は、国土交通大臣の許可または承認が必要です。
許可が必要な「空域」(第132条の88)
- DID(人口集中地区)上空:国勢調査に基づく人口密集エリア。住宅地・商業地域の多くが該当
- 地表・水面から150m以上の上空:高度制限。タワーや送電線付近での飛行に注意
- 空港・ヘリポート周辺:進入表面・転移表面・水平表面の範囲内
- 緊急用務空域:警察・消防・自衛隊等の緊急活動区域(告示で指定)
承認が必要な「飛行方法」(第132条の90)
- 目視外飛行:操縦者が直接目視できない状態での飛行(FPV・BVLOS)
- 夜間飛行:日出から日没の間以外の飛行
- 人・物件との距離が30m未満:第三者または建物等から30m以内での飛行
- 催し(イベント)上空の飛行:多数の人が集まる場所の上空
- 危険物の輸送:農薬・爆発物等の積載
- 物件の投下:機体から物を落とす行為(農薬散布も対象)
「許可」と「承認」の違い
許可は空域規制の解除、承認は飛行方法の規制解除です。多くの業務飛行では空域・方法の両方が絡むため、許可と承認を同時に申請するケースが大半です。申請画面上では「空域」と「方法」を同一の申請フォームで同時に選択できます。
3. 申請前の準備物チェックリスト
DIPS 2.0の申請画面を開く前に以下を準備します。準備不足のまま画面を開くと途中で作業が止まり、非効率です。
必須の準備事項
- 機体登録(JU番号)の完了:申請には機体のJU番号が必須。未登録の場合は先に機体登録を完了させること
- DIPS 2.0アカウント:機体登録時に作成したアカウントをそのまま使用
- 飛行場所の情報:住所・緯度経度・地図上の位置。Google Mapで事前に座標を確認しておくと便利
- 飛行予定日時:包括申請の場合は有効期間(最長1年)、個別申請の場合は具体的な日時
- 操縦者情報:氏名・連絡先・飛行経験の記録(飛行時間・飛行場所・飛行内容)
操縦者の要件(技能証明との関係)
2022年12月以降、無人航空機の国家資格制度(一等・二等無人航空機操縦士)が始まりました。一定の特定飛行(立入管理区画を設けない目視外飛行等)では二等以上の技能証明が必要です。
技能証明を持つ操縦者はDIPS 2.0上で資格情報が連携されており、申請書類の一部が簡略化されます。無資格の場合は飛行経験記録(飛行時間10時間以上等)を別途用意する必要があります。
機体の要件(型式認証との関係)
国土交通省が型式認証した機体(DJI Phantom 4 RTK、DJI Mavic 3 Enterprise等)を使用する場合は、安全基準に関する書類提出が一部省略できます。型式認証のない機体(自作機・マイナーメーカー製等)は機体の安全性に関する資料提出が必要です。型式認証の有無は国土交通省の公開リストで確認できます。
4. DIPS 2.0での申請手順(ステップバイステップ)
STEP 1:ログインして「飛行許可承認申請」を選択
DIPS 2.0にログイン後、トップメニューから「飛行許可承認申請」→「新規申請」を選択します。
STEP 2:包括申請か個別申請かを選択
- 包括申請:同一の空域・方法での飛行を繰り返す場合に有利。有効期間は最長1年。定期的な業務(測量・農薬散布等)に適している
- 個別申請:特定の日時・場所での1回限りの飛行に使用。イベント撮影・特殊な空域での単発飛行等に適している
どちらを選ぶかは飛行の頻度・場所・目的によって変わります(詳しくは第6章参照)。
STEP 3:飛行空域・方法を選択
申請する空域(DID・150m以上・空港周辺等)と飛行方法(目視外・夜間等)を選択します。画面上でチェックボックス形式で選択でき、複数の規制に該当する場合はすべてチェックします。チェックが漏れると許可の範囲外の飛行になるため、実際の飛行内容を想定しながら慎重に選択してください。
STEP 4:機体・操縦者情報を入力
登録済みのJU番号から機体を選択します。操縦者情報は初回登録後は引き継がれます。技能証明を保有している場合は証明番号を入力すると関連情報が自動入力されます。
STEP 5:飛行場所・日時を入力
包括申請では飛行エリア(都道府県・市区町村単位も可)と有効期間を入力します。個別申請では地図上で飛行場所を指定し、飛行日時を入力します。空港周辺での飛行の場合は、管制圏・進入表面等の範囲に応じた追加情報が必要になる場合があります。
STEP 6:安全対策を入力して提出
飛行に際して実施する安全対策(補助者の配置・立入禁止区画の設定・保険の加入状況等)を入力します。入力完了後、内容を最終確認して「申請」ボタンを押します。申請後は受付番号が発行され、審査状況をDIPS 2.0上で確認できます。
5. 審査期間の目安と不許可になる場合
標準処理期間
国土交通省の標準処理期間は10開庁日(土日祝除く約2週間)です。ただし、書類不備がある場合は補正を求められ、その期間は処理期間に含まれません。実務上は提出から許可取得まで2〜4週間を見込んでおくのが安全です。飛行の2〜3週間前には申請を完了させることを強く推奨します。
審査が長引くケース
- 飛行場所が複数の管制圏・制限空域にまたがる場合
- 機体が型式認証を受けていない(安全性審査が必要)
- 書類の記載が不明確または不足している
- 操縦者の飛行経験が要件を満たしていない
不許可になる主な理由
- 申請された飛行が安全上のリスクが高いと判断された場合
- 機体・操縦者が要件を満たしていない場合
- 飛行計画が航空交通管制との調整が取れない場合
不許可・却下された場合は、理由を確認の上で申請内容を修正して再申請できます。行政書士に依頼することで審査通過率を高めることも可能です。
6. 包括申請と個別申請の使い分け
DIPS 2.0の申請では「包括申請」と「個別申請」の2種類から選択します。業務内容に合った選択が重要です。
包括申請が向いているケース
- 定期的・反復的な業務:同じ地域での農薬散布、建設現場の定期測量、インフラ点検など
- エリアを固定できる業務:特定の農地・工場・太陽光発電施設など
- コスト・手間を最小化したい場合:1年間有効のため、毎回個別申請する手間が省ける
包括申請の有効期間は最長1年です。同じ内容での飛行を繰り返す場合は圧倒的にコスパが良く、業務に不可欠な選択です。
個別申請が向いているケース
- 単発・スポット的な飛行:イベント撮影、特定日の調査飛行など
- 飛行場所が毎回変わる業務:不動産撮影、建設現場の各所点検など
- 特殊な空域・条件が伴う飛行:管制圏内での単発飛行、緊急対応など
業種別の使い分け例
- 農薬散布(定期) → 包括申請:同じ圃場を繰り返し飛行
- 太陽光パネル点検 → 包括申請:設備ごとに定期巡回
- 不動産・建築撮影 → 個別申請:飛行場所・日時が毎回異なる
- イベント撮影 → 個別申請:単発・特定日時限定
- 測量(定期路線) → 包括申請:同一路線を定期測量
7. よくある失敗と行政書士が見るポイント
① 申請した空域・方法と実際の飛行が一致しない
最も多いトラブルです。申請内容に「目視内飛行」と記載したにもかかわらず、現場で目視外飛行を行うと航空法違反になります。申請時は「実際に何をするか」を正直に記載し、将来の飛行形態も考慮して少し広めの条件で申請しておくことをお勧めします。
② 飛行空域の申請漏れ
地図で確認すると「DIDに入っていない」と思っていた場所が実は人口集中地区に該当していたケースがあります。DIDの境界はG空域(国土地理院のウェブ地図)で確認できますが、目視での判断は危険です。DIPS 2.0上の地図確認機能や、DJI Fly Safe等のアプリを補助的に使用してください。
③ 飛行計画の通報を忘れる
許可・承認を取得した後も、飛行ごとに「飛行計画の通報」をDIPS 2.0上で行う義務があります(航空法第132条の90第2項、特定飛行に限る)。飛行許可を取れば何度でも自由に飛べると思っている方が多いですが、飛行のたびに計画通報が必要です。通報を忘れると、許可があっても違法飛行になりえます。
④ 更新時期を見落とす
包括申請の有効期間満了後、更新手続きをせずに飛行すると未承認飛行になります。有効期限はDIPS 2.0のマイページで確認でき、満了の約3か月前から更新申請が可能です。業務ドローンの有効期限管理も、機体登録の更新管理と同様に台帳・カレンダーで一元管理してください。
⑤ 操縦者の飛行経験記録が不十分
無資格(国家資格なし)の操縦者で申請する場合、飛行経験記録(飛行時間・場所・内容)の提出が求められます。記録をつけていない、または記録の内容が薄い場合は審査が通りにくくなります。日頃から飛行日誌をつける習慣を持つことが重要です。
まとめ:DIPS 2.0の申請を業務プロセスに組み込む
DIPS 2.0は、ドローンを業務に使うすべての事業者が必ず使いこなすべきシステムです。一見複雑に見えますが、「何のための申請か」を理解してしまえば、手順そのものは難しくありません。
最も重要なのは事前準備と余裕のあるスケジュールです。飛行の2〜3週間前には申請を完了させ、許可が下りてから飛行計画を通報する——この流れを社内の標準プロセスとして定着させることで、法的リスクを最小化できます。
申請内容の妥当性・書類の整合性・審査通過率を高めたい場合は、ドローン申請に精通した行政書士への相談も有効な選択肢です。包括申請の設計段階から関わることで、業務全体の申請コストを大幅に下げることができます。
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本記事は公開・更新時点の情報に基づいています。制度・法令は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、国土交通省・DIPS 2.0等の公式情報で最新の内容をご確認ください。
申請手続きは専門家への相談がおすすめです
ドローンの飛行許可・承認申請は、ルールが複雑で申請漏れのリスクもあります。手続きに不安を感じたら、行政書士などの専門家への相談をご検討ください。
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