ドローン立入管理措置の設置要件と実務ガイド【2026年版】カテゴリーII飛行でフェンス・補助者をどう配置するか
はじめに
「飛行許可・承認は取得できた。でも現場でどうすればいいのか分からない」——ドローンビジネスを始めた事業者から最もよく受ける相談の一つです。
特に頭を悩ませるのが「立入管理措置」です。DID(人口集中地区)上空や夜間・目視外飛行など、特定飛行を行う場合には、飛行エリアへの第三者の立入を管理する「立入管理措置」を講じることが義務付けられています。この措置が不十分なまま飛行を行うと、たとえ飛行許可を持っていても航空法違反になります。
立入管理措置は一見シンプルに見えますが、実務ではカテゴリー区分・緩衝距離の計算・補助者の配置基準・地権者との調整など、判断が難しいポイントが多岐にわたります。「とりあえずコーンを並べておけばいい」という認識では現場トラブルや法的リスクを招きかねません。
この記事では、立入管理措置の法的根拠・カテゴリーIIAとIIBの違い・立入管理区画の設定方法・フェンスや補助者の具体的な配置基準・地権者調整の実務・よくある失敗事例まで、ドローンビジネスを展開する中小企業・個人事業主が現場で即使える情報を徹底解説します。
第1章:立入管理措置とは何か——法的根拠とカテゴリー制度
1-1. 法的根拠と制度の概要
立入管理措置の法的根拠は航空法および同法施行規則にあります。特定飛行(DID上空・夜間・目視外・高度150m以上・空港周辺等)を行う際には、飛行エリアおよびその周辺に第三者が立ち入らないよう適切な措置を講じることが求められています。
この措置の具体的な内容と要件は、国土交通省が定める「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」に詳細が記載されています。審査要領は定期的に改定されるため、最新版を国交省のウェブサイトで確認することが重要です。
立入管理措置の目的は、万が一ドローンが墜落・落下した際に第三者が被害を受けるリスクを最小化することです。ドローンの不具合・操縦ミス・急な気象変化など、予期しないトラブルは常に起こりえます。飛行エリア下に第三者がいなければ、最悪の墜落が起きても人身事故を防ぐことができます。
1-2. カテゴリー制度とは
2022年12月の改正航空法により、ドローン飛行はリスクに応じた「カテゴリー制度」で管理されるようになりました。
- カテゴリーI:特定飛行に該当しない飛行(農地・山間部での昼間・目視内・150m未満の飛行等)。原則として許可・承認不要。
- カテゴリーII:特定飛行のうち、立入管理措置を講じて第三者の立入を管理した上での飛行。さらに以下の2つに分類されます。
- カテゴリーIIA:立入管理区画を設定し、区画内への第三者の立入を完全に防止した飛行。機体認証・操縦ライセンスなしでも飛行許可・承認の取得で飛行可能(一部要件緩和あり)。
- カテゴリーIIB:立入管理区画を設定するが、区画内に第三者が立ち入る可能性がある状況での飛行、または一定の措置を講じた上での飛行。
- カテゴリーIII:立入管理措置なしで第三者の上空を飛行する形態(レベル4飛行)。第一種機体認証+一等操縦ライセンスが必要。
多くのドローンビジネスはカテゴリーIIに該当します。カテゴリーIIAとIIBの違いを正確に理解し、現場の状況に合った措置を選択することが重要です。
1-3. 立入管理措置が必要な飛行の種類
立入管理措置が必要な特定飛行の主な種類は以下のとおりです。
- DID(人口集中地区)上空での飛行
- 夜間(日没後〜日出前)での飛行
- 目視外(機体を肉眼で直接確認できない状態)での飛行
- 高度150m以上での飛行
- 空港周辺での飛行
- イベント上空(催し場所)での飛行
- 物件投下を行う飛行
- 危険物輸送を伴う飛行
これらの飛行を行う際は、飛行場所・飛行ルート・機体特性を踏まえた立入管理措置の計画を事前に立て、飛行許可・承認申請書に記載する必要があります。
第2章:立入管理区画の設定要件——範囲・緩衝距離の考え方
2-1. 立入管理区画とは
立入管理区画とは、ドローンの飛行エリアを中心に設定する「第三者の立入を防止・管理するゾーン」のことです。ドローンが万が一落下した際に第三者が巻き込まれないよう、飛行経路の外側に一定の余裕(緩衝距離)を設けた区画を定め、その境界線内への第三者の立入を管理します。
立入管理区画の設定は、飛行許可・承認申請書の「飛行計画書」に記載します。区画の範囲・形状・措置の方法を具体的に示す必要があります。
2-2. 緩衝距離の考え方
緩衝距離とは、ドローンの飛行経路(またはホバリング地点)から立入管理区画の境界線までの距離です。この距離は機体の重量・飛行高度・機体カテゴリー(第一種・第二種機体認証の有無)によって異なります。
国交省の審査要領では、機体の最大離陸重量と飛行高度に応じた緩衝距離の目安が示されています。一般的な考え方として、機体が落下した場合に着地点が区画境界の外側にはみ出ないよう、飛行高度に応じた落下水平距離を考慮した範囲を区画内に含める必要があります。
実務上のポイントとして、飛行高度が高いほど緩衝距離は広くなります。例えば高度100mでの飛行では、風速・機体の飛行特性によって落下地点が水平方向に大きくずれる可能性があるため、それを加味した区画設定が求められます。
具体的な数値は機体・飛行条件ごとに異なるため、申請前に国交省の最新審査要領を確認するか、行政書士に相談することを推奨します。
2-3. カテゴリーIIAとIIBの区画要件の違い
カテゴリーIIAでは、立入管理区画内への第三者の立入を「完全に遮断」することが求められます。物理的なフェンスや立入禁止テープ、補助者による監視など、第三者が区画内に入り込めない状態を維持することが条件です。区画内に第三者がいない状態を継続的に確認しながら飛行を実施します。
カテゴリーIIBは、カテゴリーIIAの措置が現場の事情(道路が交差している、通行人が多い等)で困難な場合に適用されます。一定の立入管理措置を講じながらも、区画内への第三者の立入が排除できない状況での飛行形態です。より厳格な機体・操縦者要件(機体認証・操縦ライセンス等)が求められます。
現場の状況を正確に把握した上で、どちらのカテゴリーで申請するかを決定することが申請承認の鍵です。
第3章:具体的な措置の方法——フェンス・補助者・掲示の実務
3-1. 物理的区画の設置
最も確実な立入管理措置は物理的な区画設置です。主な方法は以下のとおりです。
- フェンス・ネット:仮設フェンスや安全ネットを区画境界に沿って設置します。完全に区画を囲う場合に最も効果的ですが、広い区画や複雑な形状の場合は費用・手間がかかります。
- パイロン(三角コーン)+ロープ・テープ:パイロンを一定間隔で配置し、間を安全ロープや立入禁止テープで繋ぎます。視覚的な境界線を明確にでき、設置・撤去が容易です。農地・駐車場・広場での飛行に多用されます。
- バリケード・ガードレール:道路脇や施設内での飛行で、歩行者・車両の侵入を防ぐために使用します。
物理的区画は「人が意図せず侵入できない」レベルの強度が必要です。単にロープを張るだけでは「立入を防止した」とみなされない場合もあるため、措置の実効性を確保してください。
3-2. 補助者(監視員)の配置
物理的区画の設置が困難な場所や、区画が広い場合には補助者(監視員)の配置が有効かつ必要です。
補助者の役割は以下のとおりです。
- 立入管理区画の境界付近での第三者の接近監視
- 第三者が近づいた際の制止・誘導
- 操縦者への危険情報の連絡(インカム等を使用)
補助者の配置数は区画の規模と形状によって決まります。補助者1名が見渡せる範囲(視認できる距離)を超える広い区画では、複数名の配置が必要です。補助者が全周囲を同時に監視できる体制が基本です。
補助者は飛行前に以下の事項について操縦者と情報を共有しておきます。
- 区画の範囲と境界の確認
- 第三者が侵入した場合の連絡方法・フライト中断の合図
- 緊急時の対応手順
3-3. 立入禁止の掲示
立入管理区画の境界には、「立入禁止」「ドローン飛行中」などの掲示を目立つ位置に設置します。文字だけでなく、ピクトグラム(絵文字)を組み合わせた掲示が外国語話者にも有効です。
掲示の内容として最低限含めるべき情報は、以下の3点です。
- 立入禁止の旨
- ドローン(無人航空機)の飛行中であること
- 問い合わせ先(連絡先電話番号)
掲示は区画の四方に設置することが望ましく、特に人が多く訪れる方向(道路・歩道側等)には重点的に設置します。
3-4. 事前周知と関係者への連絡
飛行エリア周辺の住民・施設管理者・通行人に対して、事前に飛行の日時・場所・目的を周知することも重要な立入管理措置の一環です。
周知方法としては、以下のような手段があります。
- 地元自治体・町内会へのお知らせ配布
- 施設管理者・地権者への書面通知
- 当日の立て看板・掲示板への告知
事前周知により、周辺の方々の協力を得やすくなり、第三者の侵入リスクを低減できます。
第4章:飛行禁止区域・注意が必要な空域と立入管理措置の関係
4-1. 飛行禁止区域では立入管理措置があっても飛行不可
立入管理措置は「飛行できる空域での安全対策」であり、飛行禁止区域そのものを解除する手段ではありません。どれほど完璧な立入管理区画を設定しても、飛行禁止区域では飛行できません。この点を混同してトラブルになる事業者が少なくないため、しっかり理解しておきましょう。
代表的な飛行禁止区域は以下のとおりです。①空港周辺の進入表面・転移表面・水平表面(航空法第132条)、②DID(人口集中地区)上空で許可・承認なしの飛行(航空法)、③小型無人機等飛行禁止法に基づく重要施設周辺(国会議事堂・首相官邸・原子力発電所・防衛関係施設・外国公館等の敷地とその周囲おおむね1,000m以内。2026年7月14日施行の改正法で拡大)、④緊急用務空域(消防・警察・海上保安庁の活動中に一時設定)。
立入管理措置の計画を立てる前に、まず飛行予定エリアが飛行禁止区域に該当しないかをDIPS 2.0の地図機能やSORASSPASS等で確認することが大前提です。飛行禁止区域への侵入は、立入管理措置の有無にかかわらず航空法・小型無人機等飛行禁止法等の違反となります。
4-2. 自治体条例・施設管理者ルールとの関係
航空法上の飛行禁止区域でなくても、都道府県・市区町村の条例や公園・施設の管理規則によってドローン飛行が禁止・制限されている場所があります。代表例として、国立公園・国定公園内での飛行(環境省の許可が必要)、各自治体が管理する公園・河川敷でのドローン飛行禁止区域、施設管理者が独自に設定した飛行禁止エリアなどがあります。
立入管理措置は事業者側で完結できる対策ですが、土地・施設の使用許可は別途取得が必要です。飛行エリアが他者の管理する土地・施設内にある場合は、立入管理措置の計画と並行して、施設管理者・地権者への使用申請・承諾書取得を進めておきましょう。
4-3. 人口集中地区(DID)での立入管理措置の特徴
DID上空での飛行では、市街地という性質上、通行人・自転車・車両が常に存在するため、立入管理区画の完全な封鎖が非常に困難です。道路を横断する形で区画を設定する場合は、警察への道路使用許可申請も必要になります。
DIDでの飛行は現実的にカテゴリーIIBになるケースが多く、機体認証・操縦ライセンスの取得が実務上ほぼ必須となります。DID内での継続的なビジネス展開を考えている事業者は、早めに二等以上の国家資格と第二種以上の機体認証の取得を検討することを強く推奨します。
第5章:立入管理措置と飛行許可・承認申請の連携——申請書への記載方法
5-1. 飛行許可・承認申請書における立入管理措置の記載
飛行許可・承認申請では、申請書内の「飛行計画書」に立入管理措置の内容を具体的に記載します。記載が曖昧または不十分な場合、審査が通らなかったり、追加資料の提出を求められたりします。
記載すべき主な事項は以下のとおりです。①立入管理区画の設定範囲(地図上に区画境界を明示)、②緩衝距離の根拠(機体重量・飛行高度に基づく計算)、③区画設定の具体的方法(フェンス・コーン・テープ等の種類と配置)、④補助者の配置数と役割、⑤立入禁止掲示の設置方法・位置、⑥事前周知の実施内容。
DIPS 2.0の申請フォームでは、立入管理措置の種類をプルダウン選択できる項目と、自由記述で詳細を記載する項目があります。プルダウン選択だけでなく、自由記述欄に措置の具体的な内容を追記すると審査が通りやすくなります。
5-2. 立入管理措置と飛行計画通報の連携
飛行許可・承認の取得後、実際の飛行ごとにDIPS 2.0で「飛行計画の通報」を行う必要があります。通報時には、申請書に記載した立入管理措置を実際に現場で実施することが前提です。
飛行計画通報の内容と実際の立入管理措置の内容が大きく異なる場合(例:申請書にはフェンス設置と書いたが当日は補助者1名のみで実施等)は、許可内容からの逸脱として問題になる可能性があります。申請内容と現場の措置を一致させることが原則です。
5-3. 飛行日誌への記録と証拠保全
立入管理措置を実施した事実は、飛行日誌に記録して証拠を残すことが重要です。「措置を取った」と言えるための証拠として、①飛行前の区画設置状況の写真(日時入り)、②補助者の氏名と配置状況の記録、③掲示物の設置写真、④周辺の状況写真(飛行当日の天候・視程も含む)を残しておきましょう。
万が一事故・インシデントが発生した際に、適切な立入管理措置を講じていたことを証明できれば、刑事・民事上の責任を軽減できる可能性があります。証拠保全は事業者を守る最後の砦です。
第6章:よくある失敗と実務上のポイント
6-1. よくある失敗事例
実務で頻発する立入管理措置のミスを紹介します。自社の運用に当てはまるものがないか確認してください。
【失敗①】区画の範囲が狭すぎる:緩衝距離を考慮せず、飛行経路のすぐ直下にコーンを並べるだけ。機体落下時に区画外へ落ちる可能性が高く、措置が形骸化している。
【失敗②】補助者が操縦者の隣に立つだけ:補助者は区画境界付近で第三者の接近を監視する役割。操縦者の隣に立って機体を見ているだけでは補助者の役割を果たしていない。
【失敗③】掲示物を設置したが見えない位置に:立入禁止の掲示が区画内の目立たない場所にある。第三者に視認されなければ掲示の意味がない。人が来る方向の正面に大きく掲示することが必要。
【失敗④】地権者の承諾なしに私有地で区画設定:他人の土地にフェンスやコーンを勝手に設置すると不法占拠・器物損壊のリスク。必ず事前に地権者・施設管理者の書面承諾を取得する。
【失敗⑤】申請内容と当日の措置が異なる:申請書にはフェンス設置と記載したが、当日は省略してコーンのみ。許可内容と実態の乖離は航空法違反のリスクを生む。
6-2. 地権者・施設管理者との調整の実務
立入管理措置の設置には、飛行エリアとなる土地・施設の使用許可が必要です。地権者・施設管理者との調整を怠ると、当日に飛行を断られるリスクがあります。
調整の手順として、①飛行計画書(日時・場所・目的・立入管理措置の概要)を書面で用意する、②施設管理者・地権者に事前説明を行い承諾を得る、③承諾書(または使用許可証)を書面で取得する、④当日も管理者に飛行開始を連絡する、の4ステップが基本です。
公道(道路)上空での飛行が伴う場合は、所轄警察署への「道路使用許可申請」が別途必要です。申請から許可取得まで数日〜1週間程度かかる場合があるため、飛行日の1〜2週間前には申請を済ませておきましょう。
6-3. 立入管理措置のコスト管理と効率化
立入管理措置には機材費・人件費がかかります。特に補助者の確保は、ビジネスの利益率に直接影響します。コストを最小化しながら安全を確保するためのポイントを紹介します。
機材の標準化・セット化:パイロン・ロープ・掲示板などをセット化してすぐに展開できる状態にしておくと、設置・撤収の時間を短縮できます。コーン10本+ロープ20m+立入禁止テープ+掲示板2枚のセットを車載しておくと便利です。
補助者との長期契約・業務委託:単発雇用より継続的な業務委託関係を築くことで、安定した補助者を確保しつつコストを抑えられます。農業ドローン事業では農家のスタッフが補助者を兼ねるケースも多く、現場の状況に応じた工夫が有効です。
機体認証の取得による要件緩和:第二種機体認証を受けた機体を使用することで、一部の特定飛行では立入管理措置の要件が緩和される場合があります。長期的な視点で機体投資を検討する際には、認証の有無によるコスト差も試算しておきましょう。
まとめ
立入管理措置は、ドローンビジネスを安全かつ合法的に運営するための基盤となる対策です。飛行許可・承認を取得した後も、飛行のたびに適切な措置を現場で実施することが求められます。「許可を取ったから大丈夫」という認識は大きな落とし穴です。
今回解説した内容をまとめます。①立入管理措置は航空法上の義務であり、不備があれば許可を持っていても違反になる。②カテゴリーIIAは区画内の第三者の立入を完全遮断、IIBはそれが困難な場合の形態。③緩衝距離は機体重量・飛行高度に基づき設定し、最新審査要領で確認する。④フェンス・コーン・補助者・掲示を組み合わせて実効性のある措置を講じる。⑤申請内容と現場の措置を一致させ、証拠を飛行日誌に記録する。⑥地権者・施設管理者の承諾と道路使用許可(必要な場合)を事前に取得する。
立入管理措置の実務は、経験を積むほど効率的かつ的確に実施できるようになります。最初は手間に感じるかもしれませんが、ルーティン化することでビジネスの安全性と信頼性が高まります。お客様から「安心して任せられる」と評価されるドローン事業者になるために、現場の安全管理を徹底しましょう。
立入管理措置の要件や審査要領の詳細は定期的に改定されます。最新情報は国土交通省のウェブサイトやDIPS 2.0のお知らせで確認し、常に最新ルールに基づいて運用することを心がけてください。ご不明な点は行政書士や国交省の相談窓口にお問い合わせください。
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本記事は公開・更新時点の情報に基づいています。制度・法令は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、国土交通省・DIPS 2.0等の公式情報で最新の内容をご確認ください。
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