夜間飛行の許可申請完全ガイド【2026年版】ドローン夜間ビジネスで押さえるべき申請手順・安全対策・機材選びの全て
はじめに
ドローンを使ったビジネスの幅は年々広がっており、夜間飛行の需要も急増しています。夜間の花火大会・コンサート会場上空での空撮、工場や倉庫の夜間警備巡回、農業用ドローンの夜露を利用した早朝散布——いずれも「日没後の飛行」が前提となるビジネスです。
日本の航空法では、日出から日没の間以外のドローン飛行は「特定飛行」に当たるため、原則として国土交通省への許可・承認申請が必要です。
一方で、国家資格と機体認証の組み合わせによっては申請が不要になるケースもあり、「うちは申請が必要なのか、不要なのか」という判断で迷う事業者が多いのが現実です。
この記事では、夜間飛行の法律上の定義から始まり、申請が必要なケース・不要なケースの分岐点、DIPS 2.0を使った申請手順、夜間飛行に特有の安全対策・機材選びまで、専門家の視点から実務に即して解説します。
第1章:夜間飛行とは何か?航空法上の定義と該当ケース
「夜間」の法律上の定義
航空法上の「夜間飛行」とは、日出から日没の間以外の時間帯に行うドローン飛行を指します。
具体的には日没後から翌日の日出前までの飛行が該当します。
ここで注意が必要なのは「薄暮・薄明」の扱いです。
日没直後や日出直前の「まだ明るい時間帯」であっても、天文上の日没時刻を過ぎた後の飛行は夜間飛行に該当します。
国土交通省が公表している日出・日没時刻表を確認し、飛行開始時刻が日没後にかかっていないかを必ず事前に確認してください。
日出・日没時刻は地域・季節によって大きく変わります。
夏の北海道では日没が20時を過ぎることがある一方、冬の九州では17時前後に日没を迎えます。
撮影スケジュールを組む際は、撮影地の当日の日没時刻を必ず調べた上で、余裕を持って飛行計画を立てることが重要です。
夜間飛行が絡むビジネスシーン
空撮・映像制作では、夜景・イルミネーション・花火の空撮、コンサートやスポーツイベントの演出空撮などが代表的です。
夜間の光の演出は昼間では撮れない映像価値があり、高単価案件になりやすい分野です。
警備・セキュリティでは、工場・倉庫・太陽光発電所の夜間巡回点検、不法投棄監視などが挙げられます。
サーマルカメラを搭載した夜間ドローンは人の目では見えにくい不審者・異常熱を検知できるため、警備業との連携で需要が高まっています。
農業では、夜間〜早朝の気温・湿度が低い時間帯の農薬散布や播種が農薬の蒸散を抑えて効果を高めるとして注目されています。
特に夏季の高温期には夜間・早朝散布を採用する農家が増えています。
インフラ点検では、稼働中の道路・鉄道・工場への日中アクセスが困難な施設の深夜点検が行われます。
サーマルカメラで電気系統の熱異常を発見する夜間点検は、昼間には見えにくい問題を捉えられるメリットがあります。
第2章:申請が必要なケース・不要なケースの分岐点
原則:夜間飛行は申請が必要
日出〜日没の間以外の飛行は特定飛行に該当するため、原則として国土交通省への飛行許可・承認申請が必要です。
無申請で夜間飛行を行った場合は航空法違反となり、罰則(50万円以下の罰金)の対象になります。
例外:二等資格+第二種機体認証+立入管理措置で申請不要に
2022年の航空法改正により、特定飛行の一部について国家資格と機体認証の組み合わせで申請要件が緩和されました。
夜間飛行においても以下の条件がそろえば、申請なしで飛行できます。
申請不要の条件はすべてを満たす必要があります。
操縦者が二等無人航空機操縦士資格を保有していること、使用機体が第二種機体認証を取得済みであること、そして飛行区域に立入管理措置を実施(第三者が立ち入れないよう確実に管理)していることです。
立入管理措置とは、飛行エリアを柵・コーン・テープ等で区切り、第三者が立ち入れない状態を確保することです。
夜間は視認性が下がるため、昼間より厳密な立入管理が求められます。
申請が依然として必要なケース
次の条件に当てはまる場合は、資格・機体認証の有無にかかわらず申請が必要です。
立入管理措置が取れない場所での夜間飛行(公道上、公園など)、一等資格・第一種機体認証のない状態でのレベル4相当飛行、他の特定飛行と重複する場合(例:夜間かつDID上空・目視外飛行など)がこれに当たります。
特に複数の特定飛行が重なるケースは申請書類が増え、審査も複雑になります。
「夜間かつ目視外」「夜間かつDID上空」といった組み合わせの飛行は、申請を一件ずつ丁寧に整理して進めることが重要です。
第3章:DIPS 2.0での申請手順と必要書類
DIPS 2.0での夜間飛行申請の流れ
まずDIPS 2.0にログインし(国土交通省 無人航空機情報基盤システム)、「飛行許可・承認申請」から新規申請を開始します。
次に機体情報・操縦者情報を選択し(事前登録済みのものを使用)、飛行の方法で「夜間飛行」にチェックを入れます。
その後、飛行概要・飛行空域・飛行期間を入力し、追加書類をアップロードして申請送信します。
「夜間飛行」にチェックを入れると、夜間飛行固有の書類アップロード欄が表示されます。
昼間飛行の申請と比べて書類が増えるため、事前に準備リストを作っておくことが時短のコツです。
夜間飛行申請に必要な書類
飛行経路図は夜間は視認性が低いため、周辺の障害物(電線・鉄塔・樹木)の記載が昼間より詳細に求められます。
夜間飛行安全確保説明書は機体に取り付ける灯火・ライト・LED等の仕様と配置、操縦者・補助者の視認手段を具体的に記載します。
灯火・照明設備の仕様書は機体の姿勢・方向が認識できる点灯設備について製品名・型番・色・輝度等を記載した書類です。
飛行マニュアル(夜間対応版)は国交省の標準マニュアルに夜間飛行用の追記を加えたものを提出します。
補助者配置計画書は夜間の視認性低下を考慮した機体位置把握・報告の方法を具体的に説明します。
審査期間と包括申請の活用
標準的な審査期間は10営業日前後ですが、夜間飛行は書類の記載内容が精査されやすく、2〜3週間の余裕を見ることを推奨します。
イベント撮影など繰り返し夜間飛行を行う事業者には包括申請が効果的です。
一定の空域・期間内での夜間飛行を包括的に申請しておけば、イベントごとに個別申請する手間を大幅に削減できます。
第4章:国家資格・機体認証と夜間飛行の申請要件
二等資格+第二種機体認証のメリット再確認
第2章で解説した通り、二等資格+第二種機体認証+立入管理措置の三点がそろえば、夜間飛行は申請不要になります。
特にイベント会場・農地・工場敷地など、立入管理が取りやすい環境での夜間飛行ビジネスでは、この組み合わせが強力な武器になります。
申請不要になることの実務メリットは大きく二つです。
一つは審査待ちがなくなり、スケジュール調整が格段に楽になること。
もう一つは、急な案件依頼に即応できるため、クライアントの満足度が上がることです。
一等資格+第一種機体認証での夜間レベル4飛行
一等資格+第一種機体認証があれば、有人地帯上空での夜間目視外飛行(レベル4相当)も可能になります。
ただしこのケースは申請・審査が最も厳格で、飛行経路の第三者リスク評価や安全対策の定量的な説明が求められます。
夜間の有人地帯上空飛行は2026年時点では先進的な取り組みであり、先行事例が少ないため、申請前に国土交通省の担当部署への事前相談を行うことを強く推奨します。
資格なし・機体認証なしで夜間飛行する場合
資格・認証がない状態でも申請すれば夜間飛行は可能ですが、審査のハードルは高くなります。
申請書類に「操縦者の夜間飛行経験・訓練歴」の記載が求められ、経験が乏しい場合は補助者を厚く配置するなどの代替措置が必要になります。
これから夜間飛行を事業化する場合は、早めに二等資格の取得を視野に入れることが合理的です。
第5章:夜間飛行の安全対策と機材選び
機体の灯火・ライト装備
夜間飛行で最も重要な機材上の要件が機体の灯火です。
操縦者が機体の姿勢・方向・位置を目視で把握できるよう、機体に視認性の高いライトを装着する必要があります。
実務でよく使われるのはLEDストロボライトや高輝度LEDバーです。
前後・左右が色分けされているものを使うことで、機体の向きを即座に把握できます。
夜間の視認距離は昼間より大幅に短くなるため、できるだけ高輝度のものを選ぶことが推奨されます。
DJI Mini 4 Pro等の主要機種は夜間撮影モードを搭載していますが、機体自体の灯火(機体の位置・姿勢を知らせるライト)と撮影用ライト(被写体を照らす照明)は別物であることに注意が必要です。
申請書に記載するのは前者の灯火仕様です。
夜間カメラ・サーマルカメラの活用
夜間撮影では、通常のRGBカメラだけでなく高感度カメラやサーマル(熱赤外線)カメラが活躍します。
高感度カメラはソニーIMXシリーズなど低照度に強いセンサーを搭載した機体で有利で、月明かり程度の光量でも鮮明な映像を取得できます。
サーマルカメラはDJI Zenmuse H30Tなどが代表的で、人体・動物・機械の熱を検知するため警備・点検用途に適しています。
サーマルカメラを使用した夜間飛行では、建物内の人の体温まで検知できるため、プライバシーへの配慮が特に重要です。
飛行経路の設定や撮影範囲の限定について、運航計画に明記することが求められます。
地上側の安全管理
夜間飛行では操縦者・補助者ともに視認性が下がるため、地上側の管理体制をより厳格にする必要があります。
操縦エリアには十分な照明を確保し、コントローラーのモニター画面が反射で見えにくくならないよう遮光フードを使用することを推奨します。
補助者はヘッドランプ・懐中電灯を携帯し、機体位置の報告と第三者の立入管理を確実に行います。
緊急着陸地点も夜間仕様で設定し、照明付きの安全な着陸エリアを飛行前に確認・設定しておくことが重要です。
第6章:よくある失敗と行政書士活用のポイント
夜間飛行申請でつまずきやすいポイント
①日没時刻の確認ミス:撮影日の日没時刻を調べずに「夕方5時から飛行開始」と計画を立てたところ、その日の日没が4時45分で夜間飛行申請が必要だった——というケースは珍しくありません。国立天文台が提供する日出・日没時刻計算ツールを使い、撮影地・日付を正確に入力して確認することが習慣として重要です。
②灯火仕様書の記載が不十分:「LEDライトを付けます」という一文では審査が通りません。
製品名・型番・発光色・輝度(ルーメン数)・取付位置(機体前後左右のどこか)を具体的に記載する必要があります。
③立入管理措置の方法が曖昧:「注意喚起の看板を設置します」だけでは不十分です。
柵・コーン・テープ等の具体的な資材と設置方法、立入管理担当者の人数と配置を詳細に記載してください。
特に夜間は視認性が低いため、蛍光・反射材付きの資材を使用することを明記するとより説得力が増します。
④夜間かつ他の特定飛行が重なる申請の見落とし:夜間飛行の申請はしたが、同時に目視外飛行にもなっていたことに気づかず、目視外飛行の申請が漏れた——というケースがあります。
飛行計画を立てる際は、「夜間」「目視外」「DID上空」「150m以上」など該当する特定飛行をすべてリストアップしてから申請書を作成することが重要です。
⑤騒音・住民対応の準備不足:夜間のドローン飛行は昼間より騒音クレームを受けやすいです。
地方自治体の騒音条例で夜間(22時以降など)の騒音規制がある場合は、条例に抵触しないよう飛行時間を設定する必要があります。
また、近隣住民への事前告知を飛行前に行うことで、クレームリスクを大幅に下げられます。
行政書士に依頼するメリット
夜間飛行の申請は、灯火仕様書・立入管理措置の詳細説明・夜間安全確保計画など、昼間申請に比べて作成書類が多く、記載の専門性が高くなります。
行政書士への依頼で最も効果が大きいのは「審査を一発で通す」ことです。
夜間飛行申請は書類の抜け漏れや記載の不具合で差し戻しになるケースが多く、一度差し戻されると再申請・再審査のために2〜3週間を無駄にします。
イベント撮影のような日程が固定された案件では、この遅延が致命的になります。
費用相場は個別申請で3〜5万円程度です。
撮影案件の報酬単価(夜間空撮は20〜50万円が相場)と比較すれば、専門家への依頼は十分に投資対効果があります。
まとめ
夜間ドローン飛行は、空撮・警備・農業・インフラ点検など多くのビジネスシーンで活用されており、今後もその需要は拡大する見込みです。
日没後の飛行はすべて「夜間飛行」に該当し、原則として許可申請が必要です。
ただし、二等無人航空機操縦士資格+第二種機体認証+立入管理措置の三点がそろえば申請不要になります。
DIPS 2.0申請では「夜間飛行」にチェックし、灯火仕様書・夜間安全確保説明書などを追加で提出します。
機体には視認性の高い灯火装備が必須であり、サーマルカメラ使用時はプライバシーへの配慮も求められます。
夜間かつ目視外・DID上空など複数の特定飛行が重なる場合は、すべての条件をリストアップして申請書を作成します。
イベント案件など日程が固定された依頼には、行政書士への依頼で申請を確実かつ迅速に処理することが得策です。
正しい申請と十分な安全対策のもとで夜間飛行を行うことが、ドローンビジネスの信頼性と収益性を同時に高める近道です。
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