許可・申請

DID(人口集中地区)上空のドローン飛行許可申請ガイド 2026年版|市街地飛行の手続き・必要書類・注意点を実務目線で解説

はじめに

「不動産の物件写真を空撮したいが、住宅街での飛行に許可が要るのか?」

「マンション建設中の現場を定点撮影したい。市街地だが手続きはどうなる?」

このような問い合わせは、不動産業者・建設会社・映像制作会社からも増えています。ドローンを使った市街地での空撮・点検は、費用対効果が高く需要も旺盛ですが、人が密集する地域の上空は「DID(人口集中地区)上空」として特定飛行に指定されており、原則として飛行許可申請が必要です。

一方で「国家資格を取ったから申請不要」と誤解されているケースも多く、資格と申請の関係は実務上の落とし穴になりがちです。

本記事では、DID上空飛行に必要な申請の全体像から手続き・必要書類・よくある失敗まで、行政書士の視点で体系的に解説します。

第1章:DIDとは何か、DID上空飛行が「特定飛行」になる理由

DID(人口集中地区)の定義

DID(Densely Inhabited District)は、国勢調査の結果をもとに総務省が指定する「人口集中地区」です。具体的には、以下の条件を満たす地域が該当します。

  • 人口密度が1㎡あたり4,000人以上の基本単位区が隣接している
  • それらの地区の合計人口が5,000人以上である

簡単に言えば「人が密に住んでいる市街地」です。東京・大阪・名古屋などの都市部はもちろん、地方都市の中心部や郊外の住宅団地もDIDに含まれることがあります。DIDは国勢調査のたびに更新されますが、2026年現在は2020年国勢調査に基づくDIDが基準です。

DIPS 2.0では、申請画面の地図上で飛行予定エリアを指定すると、DIDかどうかが自動的に判定されるため、「ここはDIDか?」の確認は比較的容易にできます。

DID上空飛行が特定飛行に該当する理由

航空法では、DID(人口集中地区)の上空でのドローン飛行を特定飛行の一類型として規定しています(航空法第132条の85第1項)。規制の理由は明確で、人口が集中するエリアで機体が墜落した場合の人的被害リスクが著しく高いためです。

特定飛行に該当する場合、原則として国土交通大臣の飛行許可・承認を事前に取得しなければ飛行できません。無許可での飛行は航空法違反となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象です。

DIDと他の特定飛行の重複

実務上注意が必要なのは、DID上空飛行が他の特定飛行と重複するケースです。たとえば:

  • 夜間×DID:夜間特定飛行とDID上空飛行の両方が該当 → 両方の要件を満たす申請が必要
  • 目視外×DID:目視外飛行とDID上空の両方 → どちらも申請対象
  • 150m以上×DID:高度規制とDID規制が同時に → 最も審査が厳しい組み合わせ

DID上空飛行の申請をする際は、飛行計画がほかの特定飛行に該当していないかを同時に確認することが重要です。

第2章:申請が必要なケースと、資格で変わること

申請が必要な典型的なケース

以下の業務では、DID上空の飛行許可申請が発生する可能性があります。

不動産・建設分野:

  • 住宅街・マンション周辺での物件空撮
  • 市街地内の建設現場の進捗管理・測量
  • 都市部の外壁・屋上・設備の点検

映像・イベント分野:

  • 市街地のイメージ映像制作
  • 商業施設・イベント会場周辺の撮影(催し場所上空は別の申請が必要な場合あり)

インフラ・調査分野:

  • 都市部の橋梁・電線・通信設備の点検
  • 市街地内の災害被害調査

国家資格・機体認証による申請の変化

2022年12月の制度改正により、国家資格と機体認証を組み合わせることで、DID上空飛行の申請手続きが大きく変わります。

資格なし・機体認証なしの場合(従来型):

  • DID上空飛行には飛行許可申請が必要
  • 申請書類が多く、審査も標準的なルートをたどる

二等資格+第二種機体認証の場合:

  • DID上空飛行(立入管理措置ありの場合):飛行許可申請が不要
  • 立入管理なし(レベル3.5相当):飛行許可申請が必要
  • 申請する場合でも、添付書類の省略・審査期間の短縮がある

一等資格+第一種機体認証の場合:

  • DID上空飛行(立入管理措置なし):レベル4飛行として申請上の手続きが大幅に簡略化
  • ただし、飛行計画の作成・管理義務は残る

重要なポイント:「立入管理措置」とは、飛行エリアへの第三者の立ち入りを物理的・人的に管理することです。ロープやコーン・補助者で周囲を囲って第三者が入れない状態にすれば「立入管理あり」と認定されます。この措置の有無が申請要否を分ける大きな分岐点です。

第3章:DIPS 2.0での申請手順と必要書類

申請の基本フロー

DID上空飛行許可申請は、DIPS 2.0(ドローン情報基盤システム)でオンライン完結します。

  1. DIPS 2.0にログイン(未登録の場合は事前に登録)
  2. 飛行許可・承認申請メニューを選択
  3. 申請種別の選択:「特定飛行(DID上空)」を選択
  4. 飛行概要の入力:飛行場所・飛行日時・目的・使用機体・操縦者・飛行方法
  5. 飛行経路の入力:地図上でエリアを指定(DID判定が自動表示される)
  6. 必要書類を添付
  7. 申請送信 → 国土交通省(航空局)が審査

申請に必要な書類

基本書類(ほぼすべての特定飛行共通):

  • 飛行経路図(飛行エリア・高度が分かるもの)
  • 機体の仕様書・写真(型式認証機体は型式認証番号で代替可)
  • 操縦者の技量証明(国家資格証明書、または飛行経歴記録)
  • 安全確保体制を示す書類(運航マニュアル等)

DID上空飛行に特有・または重点的に記載が必要な書類:

  • 第三者への危害防止措置を記載した書類:補助者の配置計画、立入管理の方法、緊急時手順を詳細に記載
  • 飛行エリアの周辺状況が分かる資料:Googleマップ等の航空写真で、人の往来・建物・障害物を示す
  • 夜間飛行が含まれる場合は灯火・視認確保の措置

二等資格+第二種機体認証で申請する場合(書類が省略可能):

  • 操縦者の技量証明書類が国家資格証明書のみでOK(飛行経歴記録の添付不要)
  • 機体の仕様書が型式認証番号のみでOK

標準審査期間と注意事項

DID上空の標準的な審査期間は概ね10営業日です。ただし以下の場合は時間がかかることがあります。

  • 他の特定飛行(夜間・目視外・150m以上)と重複する場合
  • 空港・ヘリポートの制限表面に近い場合
  • 申請内容に不備があり補正が求められた場合

繁忙期(年度末・大型連休前後)は審査が遅延することがあるため、飛行日の3週間前以上に申請することを推奨します。

第4章:立入管理措置の実務と「申請不要」の条件

立入管理措置で申請を不要にするための要件

二等資格+第二種機体認証を持つ操縦者が、DID上空を立入管理措置ありで飛行する場合、飛行許可申請が原則不要(届出制)になります。この「立入管理措置」の実務要件を正確に理解しておくことが重要です。

立入管理措置として認められる対策:

  • 飛行エリアをロープ・カラーコーン・バリケードで囲う
  • 補助者(立入監視員)を配置して第三者の接近を制止する
  • 「ドローン飛行中・立入禁止」の看板・テープを明示する

立入管理措置が難しいケース(申請が必要になる):

  • 道路・公道の上空(通行人を完全に止めることが困難)
  • 公園・広場など不特定多数が自由に利用する場所
  • 商業施設や駅周辺などで立入を実質的に管理できない場所

つまり、「私有地の工場敷地内」「建設現場の囲いの内側」「私有地の庭」などは立入管理しやすい一方で、「住宅街の上空」「幹線道路沿い」「繁華街」では立入管理が事実上不可能なため、申請が必要になることが多いです。

無許可・立入管理なしで市街地飛行する事業者への注意

「DIDでも市街地で実際に飛ばしているドローン業者をよく見る」という声を聞きますが、実態として無申請・無管理で飛行しているケースは少なくありません。これは明らかな違法状態です。

万が一墜落・接触事故が発生した場合、航空法違反の刑事責任に加え、被害者への民事賠償責任(不法行為・使用者責任)も発生します。ドローン賠償保険に加入していても、「違法飛行中の事故」は免責条項により保険が下りないケースがあります。法令遵守が事業継続の前提条件です。

第5章:市街地飛行で問題になる安全対策と実務上の注意点

第三者の安全確保が最重要

DID上空でのドローン飛行では、地上にいる第三者(歩行者・周辺住民)の安全確保が申請審査でも最も重視されます。

申請書の「安全確保措置」欄には、以下を具体的に記載することが求められます。

  • 補助者の人数・役割:操縦者1名に対し補助者何名を配置し、どのエリアを担当するか
  • 通行者への周知方法:看板・アナウンス・事前の地元自治会への通知など
  • 緊急時の手順:機体に異常が発生した場合の即時着陸手順、周辺への退避誘導

「補助者なし」での市街地飛行は原則として認められません(一等資格+第一種機体認証のレベル4飛行を除く)。補助者の確保ができない場合は申請自体が認められないため、飛行計画の段階で人員体制を固めておく必要があります。

個人情報・プライバシーへの配慮

市街地での空撮では、住宅の窓・洗濯物・人物が映り込む可能性があります。法的観点から留意すべき点を整理します。

  • 個人情報保護法:特定の個人を識別できる映像データは個人情報に該当し、目的外利用・無断公開は禁止
  • プライバシー権(民法・不法行為):住宅内を意図的に撮影すれば民事上の不法行為になり得る
  • 国土交通省のガイドライン:飛行前に周辺住民への告知、映像の適切な管理を推奨

撮影目的・データ管理のルールを社内マニュアルに明記し、クライアントへの契約書にも映像の利用範囲を記載しておくと、トラブル時のリスクを大幅に軽減できます。

機体選定と飛行計画

市街地飛行では機体の選定も重要な安全要素です。

  • プロペラガードの装着を検討する(義務ではないが審査上プラス評価されることがある)
  • フェールセーフ機能(通信途絶時の自動着陸・帰還)の確認
  • 飛行時間の設定:バッテリー残量に余裕を持たせ、市街地での電池切れ着陸を避ける
  • 天候確認:風速5m/s以上・視程1km未満・雨・霧の日は飛行中止が安全基準の目安

第6章:よくある申請ミスと行政書士の活用

申請でよくある失敗パターン

DID上空の飛行許可申請でよくある失敗事例を紹介します。

① 飛行エリアのDID判定漏れ

「住宅街ではないから大丈夫」と思っていた場所が実はDIDに指定されていたケース。DIPS 2.0の地図で事前確認が必須です。

② 立入管理の実態が伴っていない申請

申請書には「補助者を配置して立入管理する」と記載したが、実際の現場ではコーン1本置いただけだったケース。審査官が現地確認や写真確認をすることがあり、虚偽申請になるリスクがあります。

③ 重複する特定飛行の申請漏れ

DID上空の申請はしたが、同じ飛行が夜間飛行にも該当しているのに気づかなかったケース。複合条件を見落とすと違法飛行になります。

④ 包括申請の有効期間切れを見落とし

1年間の包括申請を取得したが、更新を忘れて有効期間が切れた状態で飛行したケース。飛行前に必ず許可の有効期限を確認してください。

⑤ 二等資格で「申請不要」と思い込み、立入管理をしなかった

二等資格+第二種機体認証があっても、立入管理なしのDID飛行は申請が必要です。資格があれば無条件に申請不要と思い込むのは誤りです。

行政書士に依頼するメリットと費用

DID上空飛行許可の申請代行を行政書士に依頼するメリットは以下の通りです。

  • 申請書類の作成代行:飛行計画・安全確保措置書類の整合性を整えて申請
  • DID・空域チェック:飛行エリアに他の特定飛行(空港周辺・150m超など)が重複していないかを事前確認
  • 補正対応:審査途中で補足説明を求められた場合の対応
  • 包括申請の設計:複数エリア・長期間の飛行を効率的にカバーする申請スキームを提案

費用の目安:

  • 個別申請(1回の飛行):2〜6万円程度
  • 包括申請(1年間・複数エリア):4〜12万円程度
  • 複合申請(DID+夜間など):上記に1〜3万円程度追加

月に複数回、市街地での撮影・点検案件を受注する事業者であれば、包括申請で年間コストをまとめる方が圧倒的に効率的です。

まとめ:市街地ドローン飛行は「申請の有無」を必ず確認

DID上空飛行の要点をまとめます。

  1. DIDは地図で確認できる:DIPS 2.0の申請画面で自動判定される。住宅街・市街地は原則DID
  2. 特定飛行に該当→原則、許可申請が必要:無申請での飛行は航空法違反
  3. 二等資格+第二種機体認証+立入管理措置があれば申請不要:ただし立入管理の実態が必要
  4. 立入管理できない場所(道路・公園等)は資格があっても申請が必要:この誤解が最大の落とし穴
  5. 重複する特定飛行がないか確認する:夜間・目視外・150m超との複合は申請内容が変わる
  6. 個人情報・プライバシーへの配慮を忘れずに:映像管理・告知の社内ルールを整備

市街地でのドローン飛行は需要が高いビジネス機会ですが、その分法的リスクも集中します。しっかりとした手続きを踏んだうえで安全に飛行することが、継続的なビジネスの基盤になります。

申請手続きに不安がある場合は、ドローン許可申請の実績がある行政書士など専門家への相談もご検討ください。当ブログでは、今後もドローンの許認可・活用に関する実務情報をお届けしていきます。

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本記事は公開・更新時点の情報に基づいています。制度・法令は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、国土交通省・DIPS 2.0等の公式情報で最新の内容をご確認ください。

申請手続きは専門家への相談がおすすめです

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