許可・申請

目視外飛行(BVLOS)の許可申請完全ガイド【2026年版】農業・物流・点検ビジネスで押さえるべき手続きと実務の全て

はじめに

ドローンを業務で活用するとき、最初の壁のひとつが「目視外飛行」の問題です。農薬散布で広大な農地を飛ばしたい、山間部の橋梁を一人で点検したい、物流ドローンを無人で遠方まで飛ばしたい——こうしたビジネスシーンでは、必ずといっていいほど操縦者が機体を目で追えない状況が生まれます。

日本の航空法では、ドローンを肉眼で視認できない状態で飛行させることを「目視外飛行」と定義し、原則として国土交通省への許可・承認申請が必要です。しかし「何をどう申請すればいいのか」「国家資格を持っていれば楽になるのか」といった点は、現場で混乱しがちです。

この記事では、目視外飛行の航空法上の位置づけから、DIPS 2.0を使った申請手順、必要書類、国家資格・機体認証との関係、現場での安全対策まで、行政書士目線で実務に即して解説します。

第1章:目視外飛行とは何か?航空法上の定義と該当ケース

「目視外」の法律上の意味

航空法では、無人航空機の飛行形態のうち「特定飛行」に当たるものを列挙しています(第132条の85)。目視外飛行はその一つで、操縦者が機体を直接視認しながら飛行させない状態を指します。

ここで重要なのは「肉眼」の範囲です。双眼鏡・望遠鏡・モニター画面での確認は「目視」にはカウントされません。たとえFPV(ファーストパーソンビュー)ゴーグルでカメラ映像を見ながら飛ばしていても、機体そのものを目で追っていなければ目視外飛行です。

ビジネスで目視外になりやすいシーン

農業(農薬散布)では農地が広すぎて機体が遠くなる・山裏に隠れるケースが頻発します。インフラ点検では橋梁の裏側・トンネル内・鉄塔の影に機体が入ります。物流・配送では出発地から目的地まで一貫した遠距離飛行が求められます。測量では大規模面積を自動飛行でカバーするため必然的に目視外になります。

農薬散布の場合、農地の面積が広くなるほど機体は自然と操縦者から遠ざかります。10アール(1反)の田んぼ1往復でも機体が50m以上離れるケースがあり、標準的な視認限界(通常は数百メートル)を超えることも珍しくありません。

「補助者あり」と「補助者なし」の違い

目視外飛行の申請実務では、補助者の有無が大きなポイントになります。

補助者ありの場合は、機体を目視できる位置に補助者を配置し、操縦者に機体の状況を無線等で伝える体制を整えます。審査が通りやすく、書類も簡略化できます。補助者なし(完全BVLOS)の場合は、機体を目視できる人員を一切配置しない形態で、技術的要件が厳しく申請書類も複雑になります。

物流・配送のような長距離飛行では補助者なしが前提になりますが、現状では事業実績や安全対策の立証が難しいため、まず「補助者あり」での承認取得から実績を積む事業者が多いです。

第2章:目視外飛行が必要なビジネスシーン詳解

農業:農薬散布・播種

農業ドローンの最大の強みは自動飛行による効率化ですが、これが目視外申請の必要性を生みます。DJI Agras T40等の農業用ドローンは、圃場マップを設定して自動で薬剤を散布しますが、農地が広大な場合は操縦者から500m以上離れることもあります。

農薬散布では「農林水産省の農薬飛行確認票」と「農薬登録情報」も追加で必要になります。DIPS 2.0の申請と合わせて準備することで、審査がスムーズになります。

インフラ点検:橋梁・鉄塔・トンネル

橋梁の桁裏やトンネル内の点検では、構造物の陰や内部に機体が入るため必然的に目視外になります。こうした特殊環境では、自律飛行プログラムで事前に飛行経路を設定し、障害物回避センサーの動作確認を申請書に記載することが審査通過のポイントです。

物流・配送:過疎地・離島へのラストワンマイル

国が推進するドローン物流(レベル4飛行を含む)では、目視外飛行は避けられません。特に離島や山間部の配送では、数km以上の飛行が必要なケースもあります。この場合、補助者なしの長距離BVLOSとなり、「飛行経路における第三者リスクの定量的評価」が求められます。

第3章:DIPS 2.0での申請手順と必要書類

DIPS 2.0で目視外飛行を申請する流れ

まずDIPS 2.0にログインし(国土交通省 無人航空機情報基盤システム)、「飛行許可・承認申請」から新規申請を開始します。次に機体情報・操縦者情報を選択し(事前登録済みのものを使用)、飛行の方法で「目視外飛行」にチェックを入れます。その後、飛行概要・飛行空域・飛行期間を入力し、追加書類をアップロードして申請送信します。

「目視外飛行」にチェックを入れると、システム上で追加の書類アップロード欄が表示されます。この欄への書類添付が必須です。

必要書類一覧

飛行経路図は飛行ルートを地図上に明示し、縮尺・方位・距離の記載が必須です。運航体制図は操縦者・補助者の配置図で無線連絡手段も記載します。目視外飛行安全対策説明書は機体スペック・センサー・自動帰還設定などなぜ安全に飛べるかの根拠を説明する書類です。補助者配置計画書は補助者がいる場合の役割・配置詳細を記載します(補助者なしの場合は代替措置を記載)。飛行マニュアルは緊急時対応・安全確保手順を記載します(国交省の標準マニュアルへの追加記載でも可)。

審査期間と申請タイミング

標準的な審査期間は10営業日程度ですが、目視外飛行の場合は書類の不備で差し戻しになることが多く、実際には2〜3週間の余裕を見て申請することを推奨します。繁忙期(農繁期・年度末)は審査が混み合うため、さらに余裕を持つことが重要です。

継続的に目視外飛行を行う事業者には包括申請が有効です。一定の空域・期間・飛行方法の範囲を広く設定した包括申請を取得しておけば、都度の個別申請が不要になり業務効率が大幅に向上します。

第4章:国家資格・機体認証による申請の変化

二等資格・第二種機体認証でも目視外は原則申請必要

DID上空や夜間飛行では、二等無人航空機操縦士資格+第二種機体認証があれば立入管理措置なしで申請が通りやすくなります。しかし、目視外飛行はこの「立入管理措置による申請不要」の対象外です。

つまり、二等資格を持っていても目視外飛行の許可申請は原則として必要で、申請書類の準備から逃れることはできません。ただし、資格を持っていることで審査官への信頼度が上がり、審査がスムーズになる傾向はあります。

一等資格+第一種機体認証でのレベル4飛行との関係

一等無人航空機操縦士資格+第一種機体認証がある場合、「レベル4飛行」(有人地帯上空の補助者なし目視外飛行)が可能になります。これは2022年の航空法改正で新設された制度です。

ただしレベル4飛行は、飛行形態として最も厳格な申請・審査が求められます。第一種機体認証の機体を使用していても、飛行空域・経路・目的によって個別の許可申請が必要なケースがあります。無資格・未認証機では申請が最も厳しく、二等資格+第二種機体認証では書類準備が簡略化される傾向があり、一等資格+第一種機体認証ではレベル4(補助者なし)の飛行が可能になります。

登録講習機関でBVLOS訓練を受ける重要性

国家資格の実地試験では目視外飛行のシナリオが出題されます。また、DIPS 2.0の申請書に「操縦者の目視外飛行経験・訓練歴」を記載する欄があります。登録講習機関でBVLOS訓練を受けた実績を持つことが、申請審査の信頼性向上につながります。

第5章:目視外飛行の安全対策と運航管理の実務

機体側の必須設定

目視外飛行では、機体が操縦者の目の届かない場所にいるため、機体側の自律的な安全機能が不可欠です。自動帰還(Return to Home)設定として通信途絶・バッテリー残量低下時の自動帰還を必ず有効化します。フェイルセーフ設定として電波途絶時に「ホバリング→自動帰還→強制着陸」の順序を設定します。GNSSの精度確認として飛行前にGPS受信衛星数と精度(DOP値)を確認します。障害物回避センサーの動作確認として全方位センサーが正常動作していることを飛行前に確認します。

地上側の管理体制

補助者を配置する場合は、明確な役割分担が実務上有効です。操縦者は飛行計画の判断・緊急時操作・コントローラー操作を担います。補助者A(機体監視)は機体の現在地・高度・動作を目視で確認し操縦者へ無線報告します。補助者B(第三者管理)は飛行区域への第三者の立入監視・誘導を行います。無線通話は携帯電話ではなくトランシーバー(特定小電力無線や業務用無線)を使用することで、通信途絶リスクを下げられます。

プライバシーと個人情報への配慮

カメラを搭載したドローンの目視外飛行では、操縦者が意図しない場所・方向を撮影するリスクがあります。個人情報保護法上、第三者の顔・車のナンバーなどが識別できる画像を無断で取得・使用することは問題になります。対策として、撮影不要な業務では物理的にカメラをオフにすること、撮影データの適切な保存・廃棄手順を事前に文書化すること、飛行エリアの地権者・住民への事前告知の三点を運航手順書に組み込むことを推奨します。

第6章:よくある失敗と行政書士活用のポイント

申請でつまずきやすいポイント5選

①「目視外」のチェックを忘れる:DIPS 2.0の入力時に飛行方法のチェックボックスで「目視外飛行」を選択し忘れるミスが散見されます。申請後に気づいても取り消して再申請が必要なため、入力完了後に必ず確認しましょう。

②飛行経路図が大雑把すぎる:「〇〇市△△町付近」といった曖昧な記載では差し戻しになります。Googleマップ等で具体的な飛行ルートを線で示し、出発点・到達点・折り返し地点の座標(緯度・経度)を記載することが求められます。

③安全対策説明書に具体性がない:「安全に配慮して飛行します」では審査が通りません。使用する機体の安全機能(センサー名・フェイルセーフ設定値)、補助者の配置数・通信手段、緊急着陸候補地の明示など、具体的な数字と手順が必要です。

④農薬散布で航空法だけ申請して農薬法を忘れる:農薬散布ドローンの場合、DIPS 2.0の飛行許可と別に、農薬のラベルに「無人ヘリコプターによる航空機散布」の記載があるかの確認と使用基準の遵守が必要です。これを見落とすと農薬法違反になります。

⑤包括申請の空域設定が狭すぎる:包括申請で取得した空域外に少しでも飛行する場合は別途申請が必要です。将来の業務拡張を見越して、包括申請の空域を余裕を持って設定しておくことがコツです。

行政書士に依頼するメリット

目視外飛行の申請は、通常の飛行許可に比べて書類が多く、記載内容の専門性も高くなります。行政書士に依頼した場合のメリットは主に3点です。書類作成の時間削減として、飛行経路図・安全対策説明書の作成を任せることで現場業務に集中できます。差し戻しリスクの低減として、経験豊富な行政書士なら審査傾向を把握しており一発通過率が高くなります。包括申請の最適設計として、業務範囲に合わせた空域・期間設定をアドバイスしてもらえます。費用相場は個別申請で3〜5万円、包括申請で5〜10万円程度です。申請が通らず飛行機会を逃した場合の損失と比較すると、専門家活用は十分に合理的な選択です。

まとめ

目視外飛行(BVLOS)は、農業・物流・インフラ点検など多くのドローンビジネスで欠かせない飛行形態ですが、航空法上の特定飛行に該当するため、DIPS 2.0での許可申請が原則として必要です。

FPVゴーグル・モニター確認は「目視」にならない——機体を直接肉眼で追えない飛行はすべて目視外です。二等資格を持っていても申請は原則必要——DID上空とは異なり、立入管理措置での申請免除はありません。DIPS 2.0では「目視外飛行」にチェックし、飛行経路図・安全対策説明書などを追加で提出します。補助者の有無で書類・審査の難易度が変わるため、まずは補助者あり申請で実績を積む戦略が現実的です。継続的な事業なら包括申請で都度申請の手間を削減できます。農薬散布は航空法+農薬法の二重チェックが必須です。

目視外飛行の申請は複雑に見えますが、正しい手順と書類を整えることで、許可取得の見込みを大きく高めることができます。不安な場合は、ドローン許可申請の実績がある行政書士への相談を検討してください。適切な許可のもとで安全に飛行することが、ドローンビジネスの持続的な成長につながります。

関連記事

本記事は公開・更新時点の情報に基づいています。制度・法令は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、国土交通省・DIPS 2.0等の公式情報で最新の内容をご確認ください。

申請手続きは専門家への相談がおすすめです

ドローンの飛行許可・承認申請は、ルールが複雑で申請漏れのリスクもあります。手続きに不安を感じたら、行政書士などの専門家への相談をご検討ください。

他の記事も読んでみる →