許可・申請

150m以上の上空飛行許可申請 実務完全ガイド【2026年版】鉄塔・橋梁・高層建築物点検で押さえるべき手続きと注意点

はじめに

「鉄塔の点検でドローンを飛ばしたいが、高さ200mを超える。どんな手続きが必要か?」

「橋脚の上部を撮影するため、河川敷から150m以上飛ばす必要がある。通常の飛行許可と何が違うのか?」

このような相談が、インフラ点検・測量の現場を持つドローン事業者から増えています。

ドローンの飛行高度に関するルールは、航空法によって「地表または水面から150m以上」という明確な基準が設けられています。この高度以上を飛行させる場合、通常の特定飛行(DID・夜間など)と異なる申請区分になるため、手続きの漏れが重大なコンプライアンス違反につながります。

本記事では、150m以上の上空飛行許可申請の全体像から実務上の注意点まで、行政書士の視点で体系的に解説します。

第1章:150m以上の飛行が「特定飛行」に該当する理由

航空法上の高度制限のしくみ

航空法では、無人航空機の飛行に関して「特定飛行」に該当する条件を定めており、特定飛行を行う場合は国土交通大臣への飛行許可・承認が原則必要です。

150m以上の高度での飛行は、航空法第132条の85第1項に定める「特定飛行」の一類型です。具体的には「地表又は水面から150m以上の高さの空域」での飛行が該当します。

この規制が設けられている理由は航空機との衝突リスクです。有人航空機(ヘリコプター・小型飛行機)は地表から150m以上の空域を飛行することが多く、ドローンがこの高度帯に侵入することで重大な事故が起きる可能性があります。

他の特定飛行との違い

150m以上の飛行が他の特定飛行(DID・夜間・目視外など)と異なる点は以下の通りです。

通常の特定飛行(DID・夜間・目視外など):

  • 飛行高度は関係なく、場所・時間帯・方法で規制される
  • 国家資格(二等)+機体認証で多くの場合は申請不要または届出のみ

150m以上の高度飛行:

  • 場所・時間帯に関わらず、高度基準を超えた時点で特定飛行に該当
  • 国家資格(一等)保有者でも、一部手続きの簡略化はあるが完全免除にはならない
  • 他の特定飛行と重複する場合がある(例:DID地区内で150m以上→2つの特定飛行が同時に該当)

高さの基準は「地表から」か「構造物から」か

実務でよく混乱するのが「150mの起算点」です。

原則:地表(地面・水面)から150m

ただし、工作物(鉄塔・煙突・橋梁・ビル等)の上端から30m以内を飛行する場合は例外規定があります。

具体的には、地表から150mを超えていても、対象構造物の最高部から30m以内での飛行であれば、当該構造物の管理者の同意を得た上で飛行できる特例があります(航空法施行規則附則の工作物近傍飛行規定)。

つまり、高さ200mの鉄塔を点検する場合:

  • 鉄塔の最高部(200m)から30m以内(170m〜200m)の飛行 → 構造物管理者同意で可

第4章:国家資格(一等・二等)と150m以上飛行の関係

国家資格取得者の優遇措置

2022年12月に導入された国家資格(一等・二等無人航空機操縦士)と機体認証の制度により、特定飛行の申請手続きが一部簡略化されました。

二等資格+第二種機体認証の場合:

  • DID・夜間・目視外・人・物件から30m以内などの特定飛行:飛行許可申請が不要(届出制または不要)
  • 150m以上の飛行:引き続き飛行許可申請が必要

一等資格+第一種機体認証の場合:

  • 立入管理措置なしのレベル4飛行も可能
  • 150m以上の飛行:一部の手続きが簡略化されるが、申請自体は必要

つまり、どの資格・認証を持っていても、150m以上の飛行は原則として事前の飛行許可申請が必要です。国家資格があれば審査が有利になる(添付書類の省略・審査期間の短縮)場合はありますが、免除にはなりません。

包括申請の活用

150m以上の飛行を定期的に行う事業者は、個別申請ではなく包括申請(複数の飛行をまとめて一度に申請する方式)を活用することで、申請事務の負担を大幅に削減できます。

包括申請のポイント:

  • 期間を最長1年として申請できる
  • 飛行エリアを「〇〇県全域」など広く設定することも可能
  • 使用機体・操縦者を複数まとめて申請できる
  • 承認後は飛行ごとの個別申請が不要になる(ただし飛行日誌の記載は必要)

インフラ点検業者が複数県にわたって鉄塔・橋梁点検を実施する場合、包括申請で「全国・150m以上・1年間」の許可を取得しておくと、受注のたびに申請する手間が省けます。

第5章:150m以上飛行の実務上の安全対策と注意点

有人航空機との空域調整

150m以上の空域は、ヘリコプター・小型機が低空飛行する可能性がある空域です。申請時の安全確保措置として以下が求められます。

目視監視の強化:

  • 補助者(目視監視者)を配置し、有人機の接近を常時監視
  • 高高度飛行では地上から機体が見えにくくなるため、追加のカメラ・モニター設置を検討

無線設備の活用:

  • 作業エリア付近のATC(航空交通管制)周波数をモニターし、低空飛行する有人機の通信を確認する
  • 付近にヘリポートがある場合は、施設管理者への事前通知が望ましい

NOTAM(航空情報)の発行申請:

  • 一定規模以上の高高度飛行では、航空当局にNOTAM(Notice to Air Missions)の発行を求めることができる。発行により他の航空機パイロットに作業情報が周知される

天候・気象条件の管理

高高度飛行では地上と上空の気象条件が大きく異なります。

  • 地上が無風でも、100m以上では強風が吹いていることがある
  • 視界は地上より広いが、霧・低雲が発生すると機体が見えなくなる
  • 雷雲・積乱雲が遠方にある場合でも、高度が上がるほどリスクが高まる

飛行前日・当日に気象庁・国土交通省の気象情報を確認し、風速15m/s超・視程1km未満・雷雲接近時は飛行を中止するという基準を社内ルールとして設定することを推奨します。

バッテリー・機体の高高度対応確認

高高度飛行では機体への負荷が増します。

  • 高度が上がると空気密度が下がり、プロペラの推力が低下する(一般的に100m上昇ごとに推力が約1%低下)
  • バッテリー消費が通常より早くなる場合がある
  • 機体の最大動作高度(メーカー仕様書に記載)を超えた飛行は禁止

使用機体の仕様書で「最大動作高度」を確認し、飛行計画の最大高度が仕様範囲内であることを必ず確認してください。

緊急時の対応計画

150m以上の飛行では、機体トラブル時のリスクが通常より高くなります。

  • フェールセーフ設定:通信途絶・バッテリー低下時に自動でホームポイントに帰還するよう設定
  • 帰還高度の設定:ホームポイント帰還時の高度を十分高く設定し、障害物に衝突しないようにする
  • 立入禁止区域の設定:地上の作業エリアに関係者以外が立ち入らないよう、フェンス・警告看板・補助者による誘導を徹底

第6章:申請代行と行政書士の活用

行政書士に依頼するメリット

150m以上の飛行許可申請は、通常の特定飛行申請より書類が複雑で、航空法の専門知識が求められます。

  • 申請書類の作成代行:飛行経路図・安全確保措置の記載など、実務経験がないと作成に時間がかかる書類を代行
  • 空域調整のアドバイス:飛行エリアの空域分類(航空路・管制空域等)を確認し、追加の調整が必要かどうかをチェック
  • 審査対応:申請後に国土交通省から追加説明や補正が求められた場合の対応
  • 包括申請の設計:事業規模・作業エリアに合わせた効率的な包括申請のスキームを提案

費用の目安

行政書士への依頼費用の目安は以下の通りです(事務所・地域・案件の複雑さによって異なります)。

  • 個別申請(単発の飛行許可):3〜8万円程度
  • 包括申請(1年間・複数エリア):5〜15万円程度
  • 構造物管理者との調整サポート込み:上記に2〜5万円程度追加

高単価のインフラ点検案件(1案件50〜200万円)を受注する場合、許可申請費用は案件費用に対して小さいため、専門家への依頼はコストパフォーマンスが高い選択といえます。

申請代行の依頼時に準備するもの

行政書士に申請を依頼する際に準備しておくと手続きが円滑に進む資料:

  • 使用機体の型式・機体認証番号・仕様書
  • 操縦者の国家資格証明書(または飛行経歴記録)
  • 飛行予定エリアの地図・座標(Googleマップ等でも可)
  • 飛行の目的・業務内容の概要
  • 飛行予定期間(包括申請の場合は希望する有効期間)
  • 構造物管理者の連絡先(工作物近傍飛行の場合)

まとめ:150m以上飛行は「許可取得まで飛ばない」が鉄則

150m以上の上空飛行における手続きの要点をまとめます。

  1. 地表から150m以上は特定飛行:航空機との衝突リスクがあるため、通常より厳しい申請要件が課される
  2. 工作物近傍の特例を活用する:構造物最高部から30m以内の飛行は、管理者同意があれば別扱いになる場合がある
  3. DIPS 2.0で申請、余裕を持って30日前に:審査期間が長いため、早期申請が必須
  4. 国家資格があっても申請は必要:二等・一等を持っていても150m以上の申請は原則として必要
  5. 包括申請でコストを下げる:定期的に高高度飛行を行うなら包括申請が効率的
  6. 安全対策を文書化する:有人機との空域調整・天候管理・緊急時対応計画を書面で準備

航空法違反(無許可での150m以上飛行)は1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。万が一、許可なく飛行中に有人機と接触事故が発生した場合は、刑事責任に加えて巨額の民事賠償責任を負う可能性があります。

申請手続きに不安がある場合は、ドローン許可申請の実績がある行政書士など専門家への相談もご検討ください。当ブログでは、今後もドローンの許認可・活用に関する実務情報をお届けしていきます。

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本記事は公開・更新時点の情報に基づいています。制度・法令は改正されることがあります。実際の申請にあたっては、国土交通省・DIPS 2.0等の公式情報で最新の内容をご確認ください。

申請手続きは専門家への相談がおすすめです

ドローンの飛行許可・承認申請は、ルールが複雑で申請漏れのリスクもあります。手続きに不安を感じたら、行政書士などの専門家への相談をご検討ください。

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